
免疫を活性化する抗原をコードするmRNAと腫瘍関連抗原をコードするmRNAをミックスしたがんワクチンの開発を行っているバイオベンチャー。新型コロナウイルス感染症COVID-19に対するワクチンの開発も行っている。
ホームページ:https://www.etherna.be/
背景とテクノロジー:
・Moderna、BioNTech、CureVacなどmRNAを使った創薬プラットフォームを持つバイオベンチャーが注目を浴びている。これは新型コロナウイルス感染症COVID-19のワクチン開発でリードしており、かつ有望な臨床結果を出しているからであるが、mRNAはCOVID-19ワクチンだけでなく、がん、免疫などさまざまな疾患治療薬への応用が試みられている。
・mRNAを用いたCOVID-19ワクチン、およびそのメリット・デメリットとは以下のようなものである(Medicagoの紹介ページより(一部改変))。
SARS-CoV-2のたんぱく質を発現するmRNAを使ったワクチン。多くの場合、SARS-CoV-2の膜表面にあるスパイクたんぱく質を発現する(SARSやMERSのワクチン開発においてスパイクたんぱく質を抗原とするのがよいという先行知見から)。化学修飾や改変したRNAを用いることで生体内で安定化したり、遺伝子導入効率を上げたりする工夫がされている場合が多い。安定性、遺伝子導入効率を上げるために脂質ナノ粒子などに封入するケースも考えられる。
メリット mRNAは自然免疫を活性化する作用を持つ。生物製剤ではないために製造が簡便(ただし承認済みワクチンがないため認可済み製造施設がまだない)。研究、製造、輸送、保存、投与時に病原性ウイルスを扱う必要がない。
デメリット 実用化されているmRNAワクチンがないため、効果、安全性が未知数という課題がある。室温での安定性が低いため、輸送や保存の際に-80℃以下の冷凍保存が必要。
・mRNAはそのまま(裸のまま)で生体に投与すると安定性、遺伝子導入効率が低いため、脂質ナノ粒子(LNP)などに封入する。このLNP技術も重要なポイントで、デリバリーしたい組織・細胞種によって、投与経路を工夫する必要がある。また、LNPについては特許の課題がありModernaはArbutus Biopharmaと係争中(参考)。
・今回紹介するeTheRNA immunotherapiesも、mRNAを用いたがん免疫療法の開発を行っているバイオベンチャーである。コア技術はcaTLR4、CD40L、CD70の3種の裸のmRNAをミックスして免疫を活性化するTriMixという技術である。それぞれの分子の役割を以下の通り。
①caTLR4
CD4/CD8 T細胞に抗原を提示するために樹状細胞を誘導し、免疫系を活性化する。
②CD40L
樹状細胞を誘導し、CD4 T細胞の抗原特異的作用を開始させる。
③CD70
樹状細胞を誘導してCD8 T細胞の免疫系を開始させる。
・TriMixは、これら3つのmRNA分子を用いてT細胞の増殖を誘導し、成熟したヘルパーT細胞または細胞毒性T細胞へと誘導する。TriMixを腫瘍特異的抗原やネオアンチゲンと組み合わせることで、患者の樹状細胞を刺激し、腫瘍抗原単独と比較して、より強力でより多くの抗原特異的な細胞障害性T細胞やヘルパーT細胞を作り出すことができる。
・最初は、TriMix技術はex vivo治療法として開発した。このex vivo治療法は、患者の体内から抽出された樹状細胞から構成されており、実験室において、腫瘍特異的抗原mRNAとTriMixを組み合わせて刺激し、自己製剤として患者の体内に再注入される。進行メラノーマを対象とした前臨床試験および第I/IIa相試験では、TriMix細胞性ex vivo治療法は、単独製品として、またはチェックポイント阻害剤と組み合わせて、樹状細胞を誘導して強力な免疫反応を誘発することができ、その結果、有望な臨床的反応が得られた。
mRNAを用いたin vivo治療法も開発している。
パイプライン:(詳細未開示)
・ ECI-006
転移性メラノーマに対するmRNAベースのワクチン。TriMixをコードする裸のmRNAと5つの腫瘍関連抗原をコードするmRNAのリンパ節内投与。単剤療法と、PD-1抗体(キイトルーダ)との併用療法を臨床にて検証している。
開発中の適応症
・Phase I
メラノーマ
・HPV陽性頭頸部がん
TriMix抗原とE6/E7抗原をコードするmRNAを脂質ナノ粒子に包んだがんワクチン。静脈内投与。
開発中の適応症
・前臨床研究段階
HPV陽性頭頸部がん
・腎臓がん
TriMixをコードするmRNAとフレームシフトネオアンチゲンを脂質ナノ粒子に包んだmRNAベースの腎がんワクチン。静脈内投与。Frame Therapeuticsとの共同研究。
開発中の適応症
・ステージ不明
腎臓がん
・腫瘍溶解性mRNA
腫瘍溶解性ウイルスの作用を模倣したmRNAベースの製品。腫瘍内投与。
開発中の適応症
・ステージ不明
がん
・COVID-19ワクチン
CoV-19ゲノム全体の中の保存されているエピトープをコードするmRNAワクチン。点鼻投与を予定。EpiVax、Nexelis、REPROCELL、CEVとの共同研究開発。
開発中の適応症
・ステージ不明
新型コロナウイルス感染症COVID-19予防
最近のニュース:
特定の腫瘍タイプにのみ発現する免疫原性の高いフレームシフト型ネオアンチゲンの発見と開発を行っているFrame Therapeuticsとがん治療mRNAワクチンの共同研究契約を締結。
コメント:
・「背景とテクノロジー」欄に記載したようにmRNA治療法は生物製剤よりも製造が簡単で、配列を変えるだけで様々な疾患に応用可能なプラットフォーム技術である。一方で、課題はデリバリー方法で、通常はLNPを用いているが、がん細胞など特定の細胞に対してデリバリーする方法はまだ課題が多い。eTheRNAはリンパ節内投与や局所投与で、LNPを用いない、裸のmRNAによる治療法も試みている。導入効率がどの程度かは不明だが、局所投与では適応疾患が限られてしまう。今後のデリバリー法開発にも注目。
・今ホットなmRNA創薬なだけに、Moderna、BioNTechなど強力なライバルが多い。これらの会社はすでに後期臨床入りして自社のmRNAワクチン技術の臨床効果について多くのデータを保有している。eTheRNAは遅れを取っているが、TriMixが臨床でどの程度強力な作用を持つかにかかっているかもしれない。
キーワード:
・mRNAワクチン
・免疫活性化
・がん
・新型コロナウイルス感染症COVID-19
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても筆者は責任をとれません。よろしくお願いします。
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