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Accent Therapeutics (Lexington, MA, USA) ーケンのバイオベンチャー探索(第194回)ー

  • 2020年12月6日
  • 読了時間: 4分

更新日:2020年12月31日


mRNAのメチル化に関わる酵素の低分子阻害剤を探索し、がん治療薬創製を目指すバイオベンチャー。「エピトランスクリプトミクス」薬という新たな領域を確立できるか?


ホームページ:https://www.accenttx.com/


背景とテクノロジー:

・DNAのメチル化やヒストンのアセチル化などの遺伝子発現制御機構エピジェネティクスに対する創薬からいくつかの治療薬が生まれてきた。たとえばDNAメチル化酵素であるDNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤AzacitidineDecitabineが、それぞれ2004年、2006年に骨髄異形成症候群治療薬としてFDAに承認された。また、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤ボリノスタット(皮膚T細胞性リンパ腫治療薬)、ロミデプシン(皮膚T細胞性リンパ腫治療薬)、Belinostat(末梢性T細胞リンパ腫治療薬)、パノビノスタット(多発性骨髄腫治療薬)が、それぞれ2006年、2009年、2014年、2015年にFDAに承認された。


・エピジェネティクスはゲノムDNAの配列変化によらない遺伝子発現を制御・伝達するシステムのことだが、上記のように主な機構はDNAメチル化とヒストンアセチル化である。最近になり、mRNAを化学修飾(メチル化)されることで発現が調節されるエピトランスクリプトミクスという現象が明らかになってきた。またこのエピトランスクリプトミクスのコード(mRNAの化学修飾の数と位置)が、一部のがんでは深刻な異常を示していることが報告されてきている。


・またRNAのメチル化を付加したり、除去したり、認識したりする役割を担うたんぱく質(ライター、イレイザー、リーダー)が見出されてきている。今回紹介するバイオベンチャーであるAccent Therapeuticsの共同創業者の一人であり、シカゴ大学のChuan He教授は、RNAからメチル基を除去する酵素を発見し、それらが癌にリンクされていることを示した。


・mRNAのメチル化については以下のような報告がある。

アデノシンの窒素原子がメチル化されたN6-メチルアデノシン(m6A)の分布

m6Aが停止コドンと呼ばれる領域の近くで、特定のmRNAの転写物にのみ集中する傾向がある

mRNAメチル化に関わる酵素の発見

mRNAのアデノシンメチル化(m6A)酵素METTL3、m6A脱メチル化酵素AlkBH5、FTO、m6Aメチル化リーダーYTHDF1

mRNAメチル化の影響

mRNAメチル化によって以下のような現象が報告されている。mRNAの3次元構造変化。mRNAの分解促進。mRNAの翻訳促進。

mRNAメチル化関連酵素と疾患との関連

m6A脱メチル化酵素FTOの急性骨髄性白血病における発現上昇(参考)。

m6A脱メチル化酵素AlkBH5の膠芽腫幹細胞における発現上昇(参考)。

遺伝子変異による急性骨髄性白血病ではm6Aメチル化酵素METTL3のレベルが固定的に上昇し、白血球の形成を妨げている(参考)。

プロモーターに結合したm6Aメチル化酵素METTL3は、関連するmRNA転写物のコーディング領域内でm6A修飾を誘導し、リボソームの失速を緩和することで翻訳を促進する。このようにしてMETTL3によって制御される遺伝子が急性骨髄性白血病に必要(参考)。

YTHDF1-/-マウスではPD-L1チェックポイント阻害による治療効果が増強(参考)。

その他詳細はこちら


・これらの発見からmRNAメチル化に関わる酵素をターゲットとした創薬が進んでいる。Accent Therapeuticsはそのリーダー的存在であり、エピトランスクリプトミクスを調節する低分子化合物の探索を行っている。


パイプライン:詳細未開示

METTL3/14阻害剤

METTL3は”背景とテクノロジー”欄記載の通り、急性骨髄性白血病との関連が報告されている。低分子化合物。


FTO阻害剤?

FTOは”背景とテクノロジー”欄記載の通り、急性骨髄性白血病との関連が報告されている。低分子化合物。


最近のニュース:

RNA修飾たんぱく質を標的とした治療法の生物学、標的の特定、創薬におけるリーダーとしてのAccent Therapeuticsの専門知識と、アストラゼネカのがん領域における業界をリードする専門知識を融合する協業を発表


コメント:

・mRNAのメチル化に関する知見はまだ不明な点が多い。研究用の酵素阻害剤さえないため、副作用なども予想できない。見つかっているmRNAメチル化関連酵素の役割についてもはっきりしない点が多い。


・mRNAのメチル化を読む技術が未成熟であるという指摘があるようだ。どのような遺伝子のmRNAにメチル化が起こっているのかなど、明らかにすべき点は多い。


・エピジェネティクス薬がそれほど大きく広がっていない(主に血液がん治療薬)が、エピトランスクリプトミクス薬はどうだろうか?今のところ、エピジェネティクス薬と似たような感じに見える。



キーワード:

・RNA修飾酵素阻害剤

・メチル化

・低分子化合物

・血液がん


免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対してもケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

 
 
 

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