医薬品を臨床開発する会社と提携して、将来のロイヤルティと引き換えに後期臨床試験や新製品の発売に資金を提供するバイオベンチャー。メガファーマとの案件も数多い。
背景とテクノロジー:
・機械学習などの技術を用いたバイオインフォマティックス解析、クライオ電子顕微鏡などを用いたたんぱく質構造解析、オミックス技術を用いたトランスレーショナルリサーチ解析、患者さん由来iPS細胞を用いたスクリーニング解析など、様々な創薬技術が開発されてきている。またモダリティについても、低分子化合物以外にも、抗体医薬品や核酸医薬品、細胞治療製品、遺伝子治療製品、ペプチド、たんぱく質などたくさんの選択肢が出てきている。しかし、そんな環境下でも薬の開発はハードルが高い。
・上記のような創薬技術によって明らかになった疾患の分子メカニズムに基づいて創薬されたにもかかわらず、臨床で効果を示さなかった例は現在でも数多くある。例えば、Biogen/Ionis Pharmaceuticalsが開発していた、SOD1遺伝子変異を持つ筋萎縮性側索硬化症(ALS)を対象とした核酸医薬品tofersenがPhase IIIで効果を示さなかったことが報告された(参考)。また、Biogen/エーザイが開発してきたアルツハイマー病治療のための抗アミロイドβ抗体アデュカヌマブも、DA承認はされたがPhase IIIで明確な効果を示すことができず、物議をかもしている。
・そのため製薬会社は海外大手を含めて開発失敗のリスクやコストを分散する戦略を増やしてきている。例えば、2社で共同開発することでリスクやコストを分散したり、他社に導出したりすることでリスクやコストを減らすなどしている。今回紹介するRoyality Pharmaは開発会社と提携して、将来のロイヤルティと引き換えに、後期臨床試験や新製品の発売に資金を提供する、もしくは間接的方法としてオリジナルのイノベーターから既存のロイヤルティを獲得することで、将来のロイヤルティを得るという方法でビジネスを行っているバイオベンチャーである。
・医薬品開発のコストと複雑さが増した結果、今日、新薬の創出には一般的に多くの関係者が関わっている。アカデミアやその他の研究機関は基礎研究を行い、新技術を企業にライセンスして開発を進める。バイオテクノロジー企業は、通常、これらの新技術をインライセンスし、応用研究や初期段階の臨床開発を通じて付加価値を付けた後、得られた開発段階の製品候補を大手製薬企業にアウトライセンスし、後期段階の臨床開発と商業化を行うか、あるいは自社で製品を商業化する。このようなバリューチェーンの中で新薬が伝達されると、ライセンス先や販売先への対価としてロイヤリティが発生する。また、バイオテクノロジー企業は、事業資金を調達するための非希釈的な資本源を提供するために、合成されたロイヤリティと呼ばれる、ポートフォリオ内の既存製品に対するロイヤリティを生み出すことが多くなっている。このような業界のパラダイムの結果、1つの新薬の開発が複数のロイヤリティの創出につながる。Royalty Pharmaは、満たされていない医療ニーズに対応するための新しい治療法の開発に伴って増加するロイヤリティを獲得し、フィーを得るというビジネスモデルを構築している。
・Royalty Pharmaは、主要なバイオ医薬品治療薬のロイヤリティを特定し、獲得してきた。1996年の設立当初からの10年間は、がん(Neulasta、Neupogen、Rituxan)、神経因性疼痛(Lyrica)、HIV(Biktarvy、Genvoya、Prezista、Symtuza、Truvada、Atripla)、TNF阻害剤(Humira、Remicade、Cimzia)など、主要な治療分野や薬剤クラスのロイヤリティを獲得してきた。現在のポートフォリオは、製品、治療分野、市場に非常に分散していて、領域も希少疾患、がん、神経、HIV、循環器、糖尿病などの幅広い治療領域に対応する45以上の市販のバイオ医薬品治療薬のロイヤルティで構成されている。ポートフォリオの推定平均ロイヤリティ期間は、約15年である。
ポートフォリオ:
最近のニュース:
Royalty PharmaはMorphoSysによるConstellation Pharmaceuticalsの17億ドルの買収の一環として、20億2500万ドルの戦略的資金調達パートナーシップを発表。Constellation Pharmaceuticalsの臨床段階の資産(pelabresibおよびCPI-0209)の将来の純売上高の3%を受け取る権利と引き換えに、MorphoSys社に14億2500万ドルの契約一時金を支払い、MorphoSys社の成長戦略を支援。
コメント:
・低分子化合物、抗体薬物複合体、核酸医薬品、抗体医薬品、ワクチンなど多岐にわたるモダリティ、そして適応症もがん、中枢神経系、感染症(HIV)など幅広い領域をカバーしており、リスクが分散されている。ほんの数十人のメンバーでこれだけの案件を評価しているのはすごい。目利き力が鍵になるだろう。アカデミアのシーズ評価は非常に難しいと思われるが薬に直結するような案件に絞っているのだろうか?
・1つの開発品にかかるコストやリスクが上がっていく方向性は変わらないだろうから、おそらく今後はこのようなビジネスモデルの会社が増えてくるのではないかと思う。
キーワード:
・ロイヤリティ
・特許
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対してもケンは責任をとれません。よろしくお願いします。
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