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GliaCure (Madison, WI, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第113回)ー


各社が開発に失敗しているアルツハイマー病治療薬の創製にチャレンジするバイオベンチャー。ミクログリアの貪食能を活性化しつつ脳内炎症を抑える経口投与可能な低分子化合物を開発している。

ホームページ:https://gliacure.com/

背景とテクノロジー:

・アルツハイマー病治療薬の開発が暗礁に乗り上げている。疾患の原因と考えられていたアミロイドβを減らすことを目的とした治療薬としてγセクレターゼ調整剤やBACE阻害剤などが臨床試験で失敗し、アミロイドβ抗体アデュカヌマブは脳内のアミロイドβ量を減らせていたのにも関わらず認知機能を改善することができないというPhase III試験の結果が出た。

・そこでアミロイドβ以外のアプローチによる治療薬創製が活発化している。例えば、Rodin Therapeuticsはエピジェネティクスを調節する分子に対する治療薬を開発している(参考)。Denali Therapeuticsは、ミクログリアを活性化する分子をターゲットとした治療薬を開発中である(参考)。Alectorは、ミクログリアの貪食能を活性化させることで、アミロイドβなどの変性たんぱく質がミクログリアに取り込まれ、変性たんぱく質の分解が促進されることでアルツハイマー病に効果を持つというメカニズムの創薬を行っている(参考)。Cortexymeは、歯周病菌が原因となってアルツハイマー病が進行するという仮説に基づいて、アルツハイマー病治療薬として歯周病菌の出すプロテアーゼの阻害剤を開発している(参考)。EIP Pharmaは、アルツハイマー病の脳内においてp38 MAPKαが過剰に活性化されることでシナプスに障害を起こしているという仮説をベースにp38 MAPKα阻害薬の効果を検証している(参考)。

・GliaCureは代謝型GPCRであるプリン受容体に作用する経口投与の低分子化合物GC021109をアルツハイマー病治療薬として臨床開発している。ターゲットはユニークだが作用機序はAlectorと類似している(Alectorより先行している)。

パイプライン:

GC021109

ミクログリアに発現する、プリン受容体の一つであるP2Y6受容体に作用する。これにより、ミクログリアは貪食能が活性化され、アミロイドβが貪食され、脳内アミロイドβ量が減少する。また、IL-12などのサイトカインの放出を抑制することで、脳内炎症が抑制される。Phase Iaで重篤な副作用がでないことを確認している。

炎症抑制作用を持つことから、喘息や自己免疫疾患への適用も検討されている。

開発中の適応症

・Phase Ib

アルツハイマー病

コメント:

・GC021109以外にもアストロサイトに着目したうつ病・睡眠などの創薬を行っているとのこと。脳内炎症は今の流行なので、”背景とテクノロジー”の欄にもあるようにミクログリアをターゲットにした創薬は多い。アストロサイトをターゲットとした創薬がどのようになっていくのか興味がある。

・Biogen/エーザイのaducanumabのPhase III試験の結果から、脳内のアミロイドβ量を減らしても認知機能を改善できない可能性が示された。これまでのアルツハイマー病治療薬は開発中のものも含めて、アミロイドβ量を減らす作用に着目して作られてきた。GC021109もミクログリアの貪食能活性化によるアミロイドβ量減少が作用メカニズムの一つになっているが、果たしてどうか?(もちろん炎症抑制とのdual actionによって効果がでる可能性はある)。

キーワード:

・神経変性疾患(アルツハイマー病)

・神経免疫(ミクログリア)

・低分子化合物

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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