クラウドコンピュータと人工知能技術を駆使してバーチャルな化合物空間の中から最適な化合物を高速に見出すバーチャルスクリーングテクノロジーを持つバイオベンチャー
背景とテクノロジー:
・Quantum Molecular Design
クラウドコンピュータと人工知能(AI)技術を用いて、化合物のターゲット分子への結合力を正確に予測するアルゴリズム。分子量850以下の化合物10の65乗個のバーチャルな化合物群の中から最適なものを見つけ出す。このプロセスによって臨床試験において良い特性を示し、毒性を持つ可能性が低い化合物を選び出すことが可能。
Quantum Molecular Designではまず最初にターゲットタンパク質の3D構造と、化合物構造とその結合親和性が明らかなトレーニングセットを用いる。シュレディンガーの波動方程式と溶媒和モデルを用いてターゲット分子への結合親和性を計算する。これにより化合物空間の中で結合親和性が高い化合物群が集まるホットスポットが自動的に生成される。選ばれた候補化合物が低い毒性と、良い”drug-like”な特性、合成可能なのかを確認するために特性フィルターを用いる。この中で残った化合物スペースに対してAIを用いて候補化合物を見出す。これらの過程はクラウドコンピューターのコンピューターパワーによって高速に処理される。
Quantum Molecular Designは、力技の自由エネルギー計算より高速であり、古典的なドッキングアルゴリズムに比べて正確である。Quantum Molecular Designの正確性はおよそ70-90%である(ドッキングアルゴリズムでは20-30%)。
パイプライン(一部抜粋、詳細情報は非開示):
・AMPK ー がん、Anabolic Glucose Metabolism
・eIF4E ー 自閉症、がん(Egenix社との共同研究)
・Metnase ー がん
・MTH1 ー がん
・PERK ー 糖尿病
最近のニュース:
17の探索プログラムが完了し次の段階に入った。
Cloud PharmaceuticalsがGSKが指定したターゲットのドラッグデザインを行う共同研究契約を締結。
コメント:
・2014年時点ではeIF4Eのプログラムで見出した化合物についてEgenix社と共同研究することになっていたが、現在Egenix社のホームページは見当たらない。このプログラムがどうなっているのかは不明。
・詳細は不明だが、低分子化合物だけでなくペプチドのドラッグデザインも行っている。
・エリスロポエチン投与による副作用を抑えるための beta common receptor阻害剤の創製を行っているが、 beta common receptorはundruggableなターゲット分子と考えられていたが、Cloud Pharmaceuticals社はそれを可能にしたとのこと(参照)。
キーワード:
・人工知能(AI)創薬
・バーチャルスクリーニング
・ターゲットベース創薬
免責事項:
正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。