Carisma Therapeutics (Philadelphia, PA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第121回)ー

July 13, 2019

キメラ抗原受容体(CAR)を遺伝子導入したマクロファージを用いたがん免疫療法で固形がん治療に挑むバイオベンチャー

 

 

ホームページ:https://carismatx.com/

 

 

背景とテクノロジー:

・T細胞に外来性にキメラ抗原受容体(CAR)を発現させたCAR-T細胞を用いた治療法が難治性の血液がんにおいて非常に高い治療効果が得られることが明らかとなり、たくさんの会社が開発を進めている(Kite Pharma(2017年Gileadにより買収)、Juno Therapeutics(2018年Celgeneによる買収)、bluebird bioなど)。一方で、固形がんにおけるCAR-T療法の効果は今のところ限定的である。

 

・固形がんにおいてCAR−T療法の効果が限定的である理由としてさまざまな可能性が言われているが、主に3つある。

①固形がんのがん細胞の多様性

承認されたCAR-T療法であるKymriahやYescartaはB細胞の血液がんの治療薬である。これらの治療薬は正常なB細胞まで除去してしまうが、B細胞の血液がんでは十分な効果を示すことができる。一方で固形がんではこのようなアプローチができる抗原は今のところ見つかっていない。固形がんのがん細胞の多様性が抗原同定を困難にしている。

②がん微小環境の存在

固形がんにおいてはがん微小環境において免疫細胞の活性化を抑制するメカニズムを獲得し(PD-L1など)、CAR-T細胞の機能を抑制してしまう。

③CAR-T細胞送達のハードル

血液がんのCAR-T療法では、CAR-T細胞は静脈内投与で血中のあらゆるところに行き渡ることができる。一方で固形がんでは細胞塊となっているためT細胞の浸潤が困難である。

 

・Carisma Therapeuticsでは、キメラ抗原受容体(CAR)を発現するマクロファージを作製し、がん患者さんに投与することで、がん細胞がマクロファージにより認識、貪食、分解される。分解されたがん細胞はがん抗原としてマクロファージがMHC上に提示することで患者さん自身のT細胞が認識し、獲得免疫が活性化される。

 

・CAR発現マクロファージ療法には、固形がんで効果を持つための以下のような利点があるとしている。

がんは、がん微小環境への免疫細胞のアクセスを制限している。しかし、マクロファージや単球は能動的に固形がんにリクルートされる。

がん組織中のがん細胞は多様性があるため、一つの抗原を認識するCAR-T療法では、その抗原を発現していないがん細胞によって抵抗性が出てしまう。しかし、CAR発現マクロファージ療法ではマクロファージが抗原提示細胞であることから、一部の抗原発現がん細胞が貪食されて抗原提示されることで、がん抗原によって獲得免疫が活性化される。これによって多様ながん細胞にも対応できる。

T細胞などの白血球細胞はがん組織への浸潤が阻害されていることが多いため、免疫療法に反応性が悪い。しかし、CAR発現マクロファージは抗がん活性を持つM1型マクロファージであり、T細胞などの免疫細胞の活性化やがん組織へのリクルートを増強する作用を持つ。

がん組織周辺には腫瘍随伴マクロファージ(TAM)と呼ばれるがん微小環境の免疫細胞の活性を抑制するマクロファージが出現する。しかし、CAR発現マクロファージは体外での培養時に、がん細胞を殺す活性を持つように調節されている。

 

 

パイプライン(詳細非開示のため推測あり):

CT-0508

HER抗原を認識するCAR発現マクロファージの細胞移植療法。非臨床研究段階。

 

CT-1119

詳細非開示

 

CT-0729

詳細非開示

 

 

コメント:

・固形がんで効果を持つCAR-T療法の開発は今非常に熱いフィールドになっており、米国や中国で多くの治験が進められている。その戦略はさまざまだが、例えば現状は1種類の抗原を認識するCAR-T細胞を投与しているが、CARの細胞外部分と細胞内部分を切り離した方法などによって、複数の抗原を認識するCAR-T細胞を用いた方法(参考)などがある。山口大学玉田先生はCAR-T細胞にIL-7とCCL19産生能力を付加することで、がん微小環境においてT細胞や樹状細胞の集積を促すことで固形がんに効くCAR-T療法の開発を進めている(参考)。

 

・M1型のマクロファージを投与することで免疫賦活化し抗がん活性を持つとのことだが、投与後の細胞周辺環境やがん細胞によってM2型に変わってしまうことはないのだろうか。

 

・投与方法(局所か、全身か)は記載されておらず不明。”背景とテクノロジー”の欄にもあるとおり、CAR-T細胞はがん組織内部へのデリバリーが固形がん適用への課題となっており、CAR発現マクロファージではどうなるのかが気になる。

 

 

キーワード:

・細胞治療(CAR-マクロファージ療法)

・固形がん

 

 

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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