Proteostasis Therapeutics (Boston, MA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第119回)ー

June 29, 2019

たんぱく質の品質管理機構に着目した創薬により、嚢胞性線維症や神経変性疾患の治療薬創製を目指すバイオベンチャー

 

 

ホームページ:http://www.proteostasis.com/

 

 

背景とテクノロジー:

・細胞内において、それぞれのたんぱく質は、3次元的に正しく折りたたまれ適切な場所に運ばれる。また、不要になれば分解され、除去される。これがたんぱく質の恒常性(Proteostasis)ネットワークによって維持されている。このネットワークは、小胞体ストレス応答(Unfolded Stress Response)、ユビキチンープロテアーゼシステム、ヒートショック応答、酸化ストレス応答などによって維持されている。

 

・このたんぱく質の恒常性ネットワークは、病気や遺伝子変異、環境因子、加齢によってバランスが崩れ、たんぱく質の品質管理が障害され、これにより発症する病気があると考えられている。例えば嚢胞性線維症は、遺伝子変異によりたんぱく質の折りたたみ異常や、たんぱく質の過剰分解が起こる。アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病などの神経変性疾患は、たんぱく質の管理機構不全により凝集化し、その凝集体の毒性により発症すると考えられている。

 

・Proteositasis Therapeuticsは、このたんぱく質の恒常性ネットワークを薬により調節したり、バランスを元に戻すことで、病気の進行抑制を目指すバイオベンチャーである。

 

・Proteostasis Therapeuticsは、DRT™(Disease-Relevant Translation™)プラットフォームという独自の創薬プラットフォームを持つ。これはゲノム解析、プロテオーム解析、機能解析などを統合し、メディシナルケミストリーでたんぱく質の恒常性ネットワークを調節する化合物創製を行う技術である。

 

 

パイプライン:

PTI-428

嚢胞性線維症の原因遺伝子であるcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)は、その遺伝子変異によりCFTRの折りたたみ異常が起こる。これによりCFTRの持つ、水とクロライドイオンを輸送する機能が低下してしまう。PTI-428は一つ一つの細胞が作るCFTRの量を増やすことで、機能低下を補う低分子化合物。

開発中の適応症

・Phase II

嚢胞性線維症

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03591094

 

PTI-801

嚢胞性線維症の原因遺伝子であるcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)は、その遺伝子変異によりCFTRの折りたたみ異常が起こる。これによりCFTRの持つ、水とクロライドイオンを輸送する機能が低下してしまう。PTI-801はCFTRの折りたたみを正常化する作用を持つ低分子化合物。

開発中の適応症

・Phase I/II

嚢胞性線維症

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03140527

 

PTI-808

嚢胞性線維症の原因遺伝子であるcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)の変異の中でも最も頻度の高いF508 deltaはチャネルの真ん中が狭まっているような形の折りたたみ異常となり、このためイオンの透過が悪くなる。PTI-808はチャネルを開いたままにする作用を持つことで、イオンが透過できるようにする低分子化合物。

開発中の適応症

・Phase I

嚢胞性線維症

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03251092

 

小胞体ストレス応答(unfolded protein response)調節薬

小胞体ストレス応答はたんぱく質の恒常性ネットワークの一つであり、折りたたみ異常を持つたんぱく質が小胞体に蓄積するストレスによって活性化される。小胞体ストレス応答の異常はたんぱく質の折りたたみ異常によって引き起こされていると考えられている以下の病気と関連しているー遺伝病、神経変性疾患、網膜変性疾患。

Proteostasis Therapeuticsは小胞体ストレス応答の調節薬がさまざまな疾患の治療薬となり得ると考えて、研究を進めている(アステラス製薬との共同研究)。

 

Usp14 (ubiquitin-specific protease 14)阻害剤

Usp14は脱ユビキチン化酵素ファミリーの一つで、たんぱく質の恒常性ネットワークを担っており、たんぱく質の品質管理を行っている。非臨床研究において、Usp14の阻害によってプロテアソームが活性化されることで、たんぱく質の分解が促進されること、特に凝集体を形成するたんぱく質の分解効率が促進されることが示された。Proteostasis TherapeuticsではUsp14阻害剤が、パーキンソン病においてα-シヌクレインの、アルツハイマー病においてタウたんぱく質の分解を促進する可能性について研究している。

 

 

最近のニュース:

Proteostasis and Astellas link on up to $1.2 billion R&D deal(2014年11月5日)

アステラス製薬と小胞体ストレス応答を調節する創薬の共同研究開発契約を締結。アステラス製薬は、契約一時金としてProteostasis Therapeuticsの転換社債を引き受ける。更に、アステラス製薬は、本提携における共同研究の費用及び研究、開発と売上の達成度に応じたマイルストンの総額として400百万米ドル超に加え、売上に応じたロイヤルティをProteostasis Therapeuticsに支払う可能性がある。

 

 

コメント:

・嚢胞性線維症のCFTR遺伝子変異には180種類もの異なるタイプが知られているが、PTI-428はさまざまな遺伝子変異のタイプに治療効果を示す可能性があるという。

 

・CFTRの遺伝子変異に対して異なる3つのメカニズムで作用する低分子化合物(PTI-428、801、808)を創製している。技術力の高さはすごいと思う。どんなアッセイ系を用いてスクリーニングしているのかが知りたいところ。

 

・凝集体を分解させるメカニズムによる神経変性疾患治療のアプローチはCedilla Therapeutics(前回のブログで紹介)も行っている。凝集体特異的な分解が可能ならすごいが、どうなのだろうか?

 

 

キーワード:

・たんぱく質品質管理

・嚢胞性線維症

・神経変性疾患

・低分子化合物

 

 

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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