Kronos Bio (San Mateo, CA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第109回)ー

April 20, 2019

創業者の一人であるMITのDr. Angela N. Koehlerbらによって開発された低分子マイクロアレイを用いたハイスループットスクリーニングから、創薬が難しいターゲット分子である転写因子に作用する低分子化合物を同定することで抗がん剤などの開発を行っているバイオベンチャー

 

 

ホームページ:https://kronosbio.com/

 

 

背景とテクノロジー:

・創薬を始める際に、ターゲットたんぱく質に対する低分子化合物を探す時、これまではたくさんの低分子化合物とターゲットたんぱく質との結合を、1つ1つ測定していくハイスループットスクリーニングが一般的だったが、この方法は時間とコストがかかる割にはヒットが取れない状況になりつつある。

 

・そこで簡便かつスピーディーにハイスループットスクリーニングができる手法が開発されており、その一つに、低分子化合物1つ1つに固有のDNA配列を結合したDNAエンコードライブラリーを用いたスクリーニング手法がある(参考)。

 

・MITのDr. Angela N. Koehlerbらは、スライドガラス上にナノリットルレベルの低分子化合物をスポット状に展開した低分子マイクロアレイ法を開発した。このマイクロアレイには、合成された低分子化合物・ペプチド模倣化合物(ペプチドミメティクス)・既知の生理活性物質・市販の化合物群・生成された天然化合物・FDA承認薬などが固定化されている。

 

・この低分子マイクロアレイのスライドガラスにターゲットたんぱく質を作用させ、ターゲットたんぱく質を認識する(蛍光ラベルされている)抗体と反応させ、マイクロアレイスキャナーやビアコア(表面プラズモン共鳴法)で測定することで、ターゲットたんぱく質に結合する低分子を同定する。

 

・この低分子マイクロアレイでは、ターゲットたんぱく質を精製しなくても、ターゲットたんぱく質を含む細胞可溶化液(cell lysate)などを用いてスクリーニングすることが可能なところが大きなメリット。精製が難しいたんぱく質に作用する低分子を取得できるし、化合物取得までの時間短縮も可能。ただ、ターゲットたんぱく質を認識する抗体は必要となる。

 

・この低分子マイクロアレイを用いた方法で、キナーゼやプロテアーゼ、転写因子に結合する低分子化合物を取得することに成功している。がんのターゲット分子と言われながら創薬が難しかったMycに対する阻害剤も取得している。

 

・ proteolysis-targeting chimeras(PROTACs)創薬のプラットフォームも構築中(Arvinas社の紹介ページ参照)。

 

 

パイプライン(詳細は非開示):

アンドロゲン受容体アンタゴニスト

従来のアンドロゲン受容体アンタゴニスト(フルタミド、エンザルタミド、ビカルタミド、ニルタミド)とは異なる部分のアンドロゲン受容体と結合する阻害剤(低分子化合物)。従来薬と異なることによりアンドロゲン除去療法に抵抗性を持つ変異(AR-V7など)に対しても有効な可能性がある。

開発中の適応症

・化合物最適化段階

前立腺がん

 

Myc阻害剤

Max分子同士のホモダイマーを安定化させることで、がんで過剰に起こっているMyc-Maxのヘテロダイマー形成を阻害する低分子化合物。Mycそのものをターゲットにするよりも毒性の軽減が期待される。

開発中の適応症

・化合物最適化段階

Mycが関係するがん

 

 

コメント:

・低分子マイクロアレイは多くの低分子化合物の、ターゲットたんぱく質への結合を、迅速かつ簡便に評価できる優れたツール。だが、可溶化できないたんぱく質には適応が難しい(どんなツールにも欠点はあるのは当然だが)。

 

・低分子化合物をスライドガラス上に固定化する部分の側鎖がターゲットたんぱく質との結合に干渉してしまい、本来結合するはずの化合物を落としてしまう可能性はあるのではないか?(DNAエンコードライブラリーも同じ問題はあるだろうが)

 

・Kronos BioのR&Dオフィスはマサチューセッツ州ケンブリッジのLabCentralに置いている。最近、日本のベンチャーも研究所をケンブリッジに置くところが出てきているらしい。本当にケンブリッジはバイオベンチャー、投資家、バイオベンチャーを買収するメガファーマの集まる場所になっている。

 

 

キーワード:

・低分子化合物

・転写因子阻害剤

・がん

 

 

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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