FLX Bio (South San Francisco, CA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第108回)ー

April 13, 2019

免疫反応を賦活化できる経口投与可能な低分子化合物によるベストインクラスながん免疫治療薬創製を目指しているバイオベンチャー

 

 

ホームページ:http://www.flxbio.com/

 

 

背景とテクノロジー:

・患者さん自身の免疫反応を活性化することでがんを除去するのが、がん免疫療法である。免疫細胞の中には、制御性T細胞(Treg)という細胞があり、自己免疫疾患や炎症のコントロールにおいて重要な役割を持っている。一方で、がん細胞もこのTregの免疫調節機能を利用し、抗がん免疫反応を減弱させることができてしまう。実際にがん微小環境にTregの集積が確認され、がん細胞がTregを利用して免疫の監視の目から逃れていることが報告されている。

 

・Tregと同じように免疫を抑制する細胞として、骨髄由来抑制細胞(MDSC)がある。MDSCは未熟な骨髄細胞で、正常な状態ではマクロファージや樹状細胞、顆粒球といった免疫細胞に分化し、免疫反応の一翼を担う。ところが、がんになるとMDSCの分化が阻害され、体内にMDSCが増えてしまう。これによって免疫反応が抑制され、抗がん免疫反応が減弱されてしまう。MDSCもがん微小環境への集積が確認されている。

 

・FLX Bioではこれらの細胞を制御することで、免疫反応を活性化させることによるがん免疫治療薬の創製を目指している。

 

 

パイプライン:

FLX475

FLX475は経口投与可能なベストインクラスのC-Cケモカイン4(CCR4)阻害剤(低分子化合物)である。CCR4はTreg細胞をがん微小環境において集積させるのに重要な役割を担っている分子である。FLX475により、がん微小環境へのTregの集積を抑制することが期待される。非臨床試験において、単剤および免疫チェックポイント阻害薬との併用療法での効果が示されている。FLX475の臨床試験では、ビッグデータ解析技術を用いて有効性を予測できるバイオマーカーの探索を行っている

開発中の適応症

・Phase I/II

進行がん

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03674567

 

FLX193

FLX193は選択的なCCR4阻害剤である。CCR4はヘルパーT細胞タイプ2(Th2細胞)に発現しており、刺激を受けると炎症部位に集積し、IL-4, IL-5. IL-13などのサイトカインを放出するため炎症を増悪させ、喘息やアトピー性皮膚炎などの自己免疫疾患を誘発する。Th2細胞のCCR4を阻害することで炎症部位へのTh2細胞の集積を抑制し、その結果、喘息やアトピー性皮膚炎が改善することが期待される。

開発中の適応症

・前臨床段階(2019年臨床入り予定)

喘息、アトピー性皮膚炎

 

GCN2

General control nonderepressible (GCN2)キナーゼはアミノ酸枯渇に反応して活性化され、T細胞を不活性化したり、T細胞の細胞死を誘導したり、Treg細胞の増殖を促す。FLX Bioでは、経口投与可能な高選択性のGCN2阻害剤を開発している。Cell-basedアッセイにおいて、FLX BioのGCN2阻害剤がアミノ酸枯渇環境下においてCD8陽性T細胞の増殖を促進していることを確認している。

開発中の適応症

・基礎研究段階(2019年前臨床ステージ移行の予定)

がん

 

USP7

Ubiquitin specific protease 7 (USP7)は、ユビキチン化されたたんぱく質のユビキチンを取り除く酵素であり、がん遺伝子やがん抑制遺伝子の安定化に関与している。FLX Bioでは、高選択性のUSP7阻害剤(低分子化合物)を開発しており、USP7阻害剤がp53の発現を上昇させることを非臨床試験で確認している。

開発中の適応症

・基礎研究段階

がん

 

 

最近のニュース:

FLX Bio Announces Clinical Trial Collaboration Agreement With Merck for Ongoing Phase 1/2 Study of FLX475(2018年11月5日)

FLX475と抗PD-1抗体キイトルーダ(ペムブロリズマブ)を併用したPhase I/II試験についてMerck社とコラボレーションを締結

 

ビッグデータを使って癌を治癒するFLX Bio(2019年2月27日)

短い記事だが、FLX Bioの紹介日本語記事

 

 

コメント:

・FLX475は、CCR4阻害剤の全身投与でがん微小環境へのTregの集積を抑制することでがん免疫を賦活化することを狙っているが、一方でFLX193は同じターゲット分子のCCR4阻害剤だがTh2細胞の炎症部位への集積を抑制するメカニズム。この違いは投与方法の違いによるのだろうか?FLX193は投与経路の記載がないが適応疾患が喘息やアトピー性皮膚炎になっており、吸入剤や塗布剤での局所投与するのかと推測する。

 

・FLX475は経口投与で全身に行き渡るが、全身でTregの機能を抑えてしまうと副作用が強そうだが、FLX475はがん微小環境へのTregの集積を抑えるコンセプトなので副作用が軽減されるという風に考えているのだろうか?専門家の方教えて下さい。

 

・低分子化合物のがん免疫治療薬は、免疫チェックポイント阻害薬などの他のがん免疫治療薬の併用がしやすそう。CAR-T療法との併用も考えられているようだ。

 

・FLX Bioの前身の会社であるFlexus Biosciencesは2015年にBristol-Myers Squibbによって買収された。FLX Bioはその時にスピンアウトして生まれた会社。セルジーンが出資している。

 

 

キーワード:

・がん免疫

・低分子化合物

・制御性T細胞

・バイオマーカー

 

 

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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