Platelet Biogenesis (Cambridge, MA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第103回)ー

February 23, 2019

輸血用血小板を多能性幹細胞から作り出す方法を開発しているハーバード大発のバイオベンチャー

 

 

ホームページ:http://www.plateletbiogenesis.com/

 

 

背景とテクノロジー:

・水泳の池江璃花子選手が白血病に罹患したことを公表し、骨髄移植や輸血に注目が集まっている。骨髄移植に関するバイオベンチャーとしてはMagenta Therapeuticsを取り上げているので、今回は輸血に関するバイオベンチャーPlatelet Biogenesisを取り上げる。

 

・献血で集められた血液は冷蔵保存で21日間しか使用できない(低温でも増殖できる細菌の混入のリスクのため)。しかも21日間使えるのは赤血球、血漿であり、血小板は4日間しか効果が持続しない(参考)。そのため、血小板は常に不足するリスクがある。

 

・このリスクを解決するために多能性幹細胞から分化させた巨核球細胞(血小板を作り出す細胞)から工業的に血小板を作る技術の開発が進んでいる。

 

・Platelet Biogenesisでは培養したiPS細胞を分化させ巨核球細胞を作り、この巨核球細胞を骨髄環境と似た状態を作り出すバイオリアクターの中で培養することで血小板の産生を促す。

 

・血小板はヒトの体内では10日間その機能を保つ。献血の血小板は4日しか保たないが、論理的には10日保つはずで、巨核球細胞から産生された血小板も10日間保つ可能性があり、Platelet Biogensisはその可能性につても検討していく。

 

・Platelet Biogenesisでは、この体外での血小板製造のみならず、製造した血小板内の分泌顆粒中に医薬品(抗体医薬品など)を封入し、疾患部位に届ける技術designer PLTs+™を開発している。血小板は固形がんに誘導される性質を持ち、この性質を利用してがんへの応用を試みている。

 

 

パイプライン(非開示):

体外産生血小板

iPSより分化した巨核球細胞を独自のバイオリアクターで培養して作らせた血小板の精製物。2020年までの臨床入りを目指している(2017年時点)。

 

 

コメント:

・アステラス製薬が買収したOcata Therapeuticsと、2014年頃にiPS細胞から機能的な巨核球細胞が誘導できることを示す共同研究を行っていたようだが、その情報は現在はホームページから削除されている(参考

 

・献血では血小板の供給が足りないという問題はあるが、臨床で要求される量をこの方法で作るのは大変だろう。十分な生産量が出せるのかどうか、またコスト的な問題も懸念点。

 

・血小板をDDS技術として用いるというのはとてもおもしろい。どの程度がん組織への指向性があるのかが知りたい。

 

・レアなHLAを持つ患者さんのための血小板は献血で供給するのは難しいので、それを工業的に作るというのは非常に意義がある。ただ、これはお金はかかりそうだと想像する。

 

・日本にも、同じようにiPS細胞からの血小板生産を開発している京都大学発ベンチャーのメガカリオンという会社がある。また、脂肪組織由来の間葉系幹細胞から血小板を作る技術を持つ慶応大学発ベンチャーのAdipoSeedsという会社がある。間葉系幹細胞からの血小板生産はコストダウンが期待できるようだ。

 

 

キーワード:

・体外での血小板生産

・iPS細胞

・DDS(固形がん治療)

 

 

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

 

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