Celularity (Warren, NJ, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第98回)ー

January 19, 2019

胎盤由来幹細胞を用いた再生医療により、がん免疫、その他の慢性疾患の治療法開発に取り組むバイオベンチャー。セルジーンからのスピンアウト。

 

 

ホームページ:https://www.celularity.com/

 

 

背景とテクノロジー:

・iPS細胞、ES細胞や間葉系幹細胞を用いた再生医療の開発が進んでいる。間葉系幹細胞では、その強い免疫調節作用を利用した治療法として、造血幹細胞移植時に起こる移植片対宿主病(GVHD)への治療薬として国内で承認されている(テムセル)。

 

・理研の高橋政代プロジェクトリーダーのグループは、他家iPS細胞から分化させた網膜色素上皮細胞懸濁液を眼に移植することによる加齢黄斑変性症治療の臨床研究を行っている。また、京都大CiRAの高橋淳教授のグループは、他家iPS細胞から分化させたドパミン神経前駆細胞を脳に移植することによるパーキンソン病治療の医師主導治験を行っている。

 

・米バイオベンチャーのAsterias Biotherapeuticsは、ES細胞から分化させたオリゴデンドロサイト前駆細胞を移植することによる脊髄損傷治療の治験(Phase 1/2a)を行っており、現在のところ良好な結果が報告されている。

 

・これら以外にも多能性幹細胞や体性幹細胞を用いた移植治療は現在進行中であるが、懸念点も指摘されている。例えばiPS細胞(やES細胞)は、分化誘導後の細胞の中に残った未分化細胞がガン化する懸念がある。間葉系幹細胞は有限増殖のため健常人ドナーからの提供が必要であり、ウイルス感染の懸念も残る。また、ドナーの年齢によって分化能や増殖能にばらつきがあることが指摘されている。

 

・そのため、安全で、入手が比較的容易かつ安定的な供給が可能な細胞種がどれかは未だ定まっていない(細胞種ごとに使える用途の違いというものもある。多能性幹細胞と体性幹細胞は特長が異なり同一用途では扱えないケースが多い)。

 

・Celularityでは胎盤由来の幹細胞を用いた再生医療に取り組んでいる。これは、胎盤由来の幹細胞には免疫調節作用があるため、他家移植が可能である可能性が高いこと、出産時に廃棄されるため入手が容易であること、組織採取が容易でありドナーへの負担が少ない、などの利点があるためである。

 

・胎盤から得られる幹細胞は間葉系幹細胞などの体性幹細胞(3胚葉へ分化可能だが、iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞ではない)。

 

 

パイプライン(詳細不明):

PNK-007

ヒト臍帯血から抽出した造血幹細胞を体外で分化させたNK細胞を用いた他家細胞移植治療。静脈内投与。NK細胞が体内で増えるようにIL-2が皮下投与される。NK細胞投与後、自家幹細胞移植による治療を行う。

開発中の適応症

・Phase I

急性骨髄性白血病、多発性骨髄腫

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02955550(多発性骨髄腫)

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02781467(急性骨髄性白血病(治験中止))

 

CD38 CAR-T

CD38を認識するCARを発現するT細胞を用いた自家細胞移植治療。

開発中の適応症

・IND申請段階(2017年第4クオーター申請予定)

多発性骨髄腫

 

PDA-002

胎盤由来間葉系幹細胞を用いた他家細胞移植治療。筋肉内投与。

開発中の適応症

・Phase II

糖尿病性足潰瘍、糖尿病性神経障害

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02264288(糖尿病性足潰瘍)

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02552277(糖尿病性神経障害)

 

PDA-001

胎盤由来細胞を用いた他家移植細胞治療。静脈内投与。

開発中の適応症

・Phase II

クローン病

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT01155362

 

BIOVANCE®

Interfyl®

やけど回復、腱修復、神経組織修復などの再生プロセス増強を目的としたバイオマテリアル(生体材料)

 

 

コメント:

・胎盤由来幹細胞を用いた再生医療は、他の再生医療より優れているようにホームページに書かれている。それを引用して上記の”背景とテクノロジー”に記載した。ただ、調べた限りは間葉系幹細胞のオリジンとして胎盤を用いているということで、間葉系幹細胞治療の域は出ていないのではないだろうか(免疫抑制作用は間葉系幹細胞全般が持ち合わせており、他家移植可能)。胎盤由来間葉系幹細胞だけがもつ特質があるのであれば面白い(詳細ご存じの方教えて下さい)。

 

・間葉系幹細胞の採取部位(骨髄、臍帯、歯髄、脂肪など)によって細胞の性質に違いがある可能性はあるが、現在のところ定まってはいない。一部の報告では臍帯は細胞の増殖率がよく、免疫抑制系のサイトカイン放出量も多いようだ(若い組織ゆえ?)。

 

 

キーワード:

・胎盤由来の間葉系幹細胞

・細胞治療

・がん免疫

・再生

・バイオマテリアル

 

 

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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