Atreca (Redwood City, CA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第93回)ー

December 16, 2018

奏効したがん患者さんの一つ一つの免疫細胞から治療効果を持つ抗体情報を探しだし、多くのがん患者さんに効果を持つ抗体医薬品を作り出すというリバース・エンジニアリングによるアプローチを行っているバイオベンチャー

 

 

ホームページ:https://www.atreca.com/

 

 

背景とテクノロジー:

・2018年のノーベル賞にがん免疫の研究成果が選ばれたように、免疫の増強によるがん治療の進展が著しい。すでにオプジーボ(Nivolumab)やキイトルーダ(Pembrolizumab)が多くのがん種で効果を示すことが報告されている。

 

・このようにがん免疫に注目が集まり、次のがん免疫治療法を開発しようと多くのメガファーマ、バイオベンチャーがしのぎを削っている。例えば、CAR-T療法はNovartis、Celgene (Juno Therapeutics)、Gilead Sciences (Kite Pharma)をはじめとする多くの企業が開発している。次世代の免疫チェックポイント阻害薬を目指す、Forty Sevenや、Palleon Pharmaceuticalsなどのバイオベンチャーもある。

 

・そんな中、Atrecaは、治療が奏効した患者さんの免疫細胞から、奏効に寄与した抗体を探り出し、医薬品にするリバース・エンジニアリングによって新たながん免疫療法の開発を目指している。

 

・Atrecaの創薬モデルは以下の4つのパートに分けられる。

①臨床サンプルの収集

24種類以上の固形がんの患者さんの血液サンプルを収集し、貯蔵している。

②独自技術Immune Repertoire Capture® (IRC™) technology

がん患者さんの血液サンプルの中から抽出した一つ一つのメモリーB細胞が産生する抗体のH鎖およびL鎖のたんぱく質配列を同定する。

In Silico解析

上記Immune Repertoire Capture® (IRC™) technologyで得られたがん患者さんが持つ抗体レパートリーの評価・解析によって選択し、選ばれた抗体のたんぱく質配列から遺伝子を合成・発現させ、さらなる解析に用いる。

④Wet実験解析

患者さんのメモリーB細胞が産生する抗体のたんぱく質配列情報から作ったリコンビナント抗体について、in vitroおよびin vivoで解析を行い、治療効果を持つ抗体を選び出す。特に、患者さん各々でのみ効果を持つ抗体ではなく、多くのがん患者さんで効果を持つ抗体を選び出す。

 

 

パイプライン(詳細非開示):

ATRC-101

ドライバー・抗原の会合というメカニズムを持つ抗体医薬品

開発中の適応症

・IND申請可能段階(2019年の臨床入りを予定)

さまざまな固形がん(乳がん・肺がん・大腸がん)

 

ATRC-201

直接的な細胞死滅を引き起こすメカニズムを持つ抗体医薬品

開発中の適応症

・候補選別段階(2020年の臨床入りを予定)

さまざまな固形がん

 

 

最近のニュース:

Atreca, Inc., Establishes Strategic Collaboration with Johnson & Johnson Innovation and Janssen to Apply Immune Repertoire Capture™ Technology to Autoimmune Disease(2014年12月2日)

Atrecaの持つ独自技術Immune Repertoire Capture® (IRC™) technologyを用いて、自己免疫疾患に関わるT細胞受容体を見出すことで治療薬創製を目指す共同研究契約

 

 

コメント:

・免疫細胞一つ一つの持つ抗体やT細胞受容体などの抗原認識サイトの配列を同定する独自技術は、がん免疫のみならず自己免疫疾患など免疫が関わる疾患に応用可能であり、非常に期待が高まる。一方で、奏効する患者さんのメカニズムが抗体やT細胞受容体などによるものとは限らないため、地道に臨床サンプルの解析を行って、コンスタントに新たなものが見つかるとは限らないように見える。この技術が幅広く使えるか今後もパイプラインが増えていくかどうかが注目である。

 

・最近流行のシングルセル解析がこういう形で応用されるという良い見本だと思う。

 

 

キーワード:

・抗体医薬品

・リバース・エンジニアリング

・シングルセル解析

・がん免疫

 

 

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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