ArmaGen (San Diego, CA, USA) ー元製薬研究員ケンのバイオベンチャー探索(第41回)ー

February 4, 2018

血液脳関門の専門家であるUCLAのWilliam M. Pardridgeらによって作られた血液脳関門透過技術によって中枢神経系疾患治療薬創製を目指すバイオベンチャー

 

 

ホームページ:http://armagen.com/

 

 

パイプライン:

AGT-181

抗ヒトインスリン受容体モノクローナル抗体とα-L-イズロニダーゼを結合させた融合タンパク質。脳にα-L-イズロニダーゼという酵素を到達させるために、この酵素に脳内にタンパク質を輸送できる抗インスリン受容体抗体を付加している。

開発中の適応症

・Phase 2

ハーラー症候群(ムコ多糖症の一つ)

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03071341

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT03053089

 

AGT-182

抗ヒトインスリン受容体モノクローナル抗体とイズロン酸-2-スルファターゼ(IDS)を結合させた融合タンパク質。脳にIDSという酵素を到達させるために、この酵素に脳内にタンパク質を輸送できる抗インスリン受容体抗体を付加している。Shire社との共同開発。

開発中の適応症

・Phase 1

ハンター症候群(ムコ多糖症の一つ)

https://clinicaltrials.gov/ct2/show/NCT02262338

 

AGT-183

抗ヒトインスリン受容体モノクローナル抗体とアリールスルファターゼA(ASA)を結合させた融合タンパク質。脳にASAという酵素を到達させるために、この酵素に脳内にタンパク質を輸送できる抗インスリン受容体抗体を付加している。

開発中の適応症

・前臨床段階

異染性白質ジストロフィー

 

AGT-184

抗ヒトインスリン受容体モノクローナル抗体とN-sulphoglucosamine sulphohydrolase(SGSH)結合させた融合タンパク質。脳にASAという酵素を到達させるために、この酵素に脳内にタンパク質を輸送できる抗インスリン受容体抗体を付加している。

開発中の適応症

・前臨床段階

サンフィリッポ症候群(ムコ多糖症の一つ)

 

 

最近のニュース:

Trial shows ArmaGen biologic improves cognition in Hurler syndrome patients(2017年2月17日)ブラジルでのAGT-181のハーラー症候群患者さん最初の5人へのP2治験結果。5人中4人の患者さんで神経症状、認知症状への改善効果が見られている。5人目の患者さんも認知症状の低下は抑えられている。

 

認知症薬、脳の「関門突破」に前進――悲願達成へ治験の現場(2018年2月3日)ブラジルでのAGT-181のハーラー症候群への治験に関する日本語記事。血液脳関門を透過できることから認知症薬への応用が期待できると述べている(個人的コメントとしては、認知症治療薬のハードルは血液脳関門透過だけではないと思うが)。

 

 

コメント:

・ArmaGen社が取り組んでいる疾患はライソゾーム病に分類される。ライソゾームとは細胞内小器官の一つで様々な酵素を含んだ生体膜に包まれた構造体。このライソゾーム内で様々な分子が分解されている。ライソゾーム病はこのライソゾーム内に本来あるはずの酵素が遺伝子変異し欠失してしまう病気で、酵素によって分解されるはずだった分子が蓄積することで病気を発症する。

 

・ライソゾーム病は酵素が欠失していることで起こる病気のため、外から血液中に酵素そのものを注入する酵素補充療法が用いられる。しかし、酵素などのタンパク質は血液中から脳内へ入ることができない(血液脳関門があるため)。そこでArmaGen社は血液脳関門を透過できるインスリン受容体抗体と酵素をつなぐことで酵素が脳内でも働くようにし、ライソゾーム病の中枢神経症状を治療することを試みている。

 

・抗インスリン受容体抗体とは異なる方法で脳内に酵素を透過させる技術J-Brain CargoをもつJCRファーマ社(本社:兵庫県)もハンター症候群を対象としたPhase 1/2治験(JR-141)を行っている。

 

・分子量500以上の分子は血液脳関門を透過しにくい(一部入る分子もある)。そのために抗体も核酸も脳内に作用することができないという制限があり、そのため中枢神経系疾患の治療薬は作ることが非常に難しい。ArmaGen社の抗インスリン受容体抗体やJCRファーマ社のJ-Brain Cargoなどの脳血液関門透過技術が確立すれば、中枢神経系疾患に治療薬創製が進むかもしれない。

 

・ArmaGen社ではライソゾーム病以外にも、パーキンソン病と脳卒中(AGT-115; エリスロポエチン+血液脳関門透過技術)、同じくパーキンソン病と脳卒中(AGT-190; GDNF+血液脳関門透過技術)、パーキンソン病、ALS、アルツハイマー病と脳卒中(AGT-110; TNF阻害剤+ 血液脳関門透過技術)、アルツハイマー病(AGT-160; 抗アミロイドβ抗体+血液脳関門透過技術)などの神経変性疾患治療薬の創製に取り組んでおり、現在非臨床研究段階。

 

・現在治験に入っているプロダクトは抗インスリン受容体抗体と酵素などのタンパク質の融合体だが、血液脳関門を透過できる可能性があるターゲットとして、ArmaGen社はインスリン受容体以外にもトランスフェリン受容体、低密度リポタンパク質(LRP1)受容体があることを見出している。

 

 

キーワード:

・血液脳関門透過技術

・ライソゾーム病

・神経変性疾患(パーキンソン病、アルツハイマー病)

 

 

免責事項:

正確な情報提供を心がけていますが、本内容に基づいた如何なるアクションに対しても元製薬研究員ケンは責任をとれません。よろしくお願いします。

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